構成:森吉教授,窪山准教授,特任教授(3名),特任研究員(4名),博士課程(6名),修士課程(17名),学部生(11名)
私達の研究室は自動車やコジェネの動力源や実走行時の環境負荷低減に関する研究を行っています。自動車が抱える大きな課題の一つとして地球温暖化や燃料枯渇などといった環境問題があります。こういった課題解決のため
Ⅰ. 有害排気物質の低減
Ⅱ. 熱効率の改善(燃費率の改善)
III. V2Xを利用し交通流も制御するモデル開発
が要求されています.
環境影響物質の例として,昨今関心が高まるPM2.5などを含む浮遊粒子状物質SPMが注目されており,自動車の排気ガス規制もこれに伴って年々厳しくなっているのが現状です.
本研究室では自動車によるエネルギー使用のミニマム化と自動車から排出される有害排気物質と二酸化炭素のゼロエミッション化を実現するための研究を行っています.
また,ライフサイクルでの車両からのNOやPNなどの有害物質やCO2排出量を削減するには下図に示すように、IoTと繋がるV2Xを踏まえた交通流の中での車両のゼロエミッション化の研究を行う必要があります。交通流の最適化モデルや制御手法に関する論文は多くみられますが、実証がなされていません。新たなテーマとして、実証方法も含めて国際的なイノベーション課題として計画を始めたところです。
充実した設備を用いて,大学間だけでなく企業などとも連携して,数値解析,実験の二つのアプローチ法を用いて研究を行っています.
次に数値解析,実験について,それぞれどのように行っているかを紹介していきたいと思います。
・数値解析
数値解析のアプローチでは1D,3Dモデル等を用いて計算を行い各々の課題解決に向けて取り組んでいます。
テーマが多岐に渡るため一部分のテーマを少しずつ紹介していきたいと思います。
・人工ニューラルネットワークを用いた0次元ラジエータ熱収支モデルのパラメータ同定
シャシダイナモ,路上走行データに基づき燃料消費モデルを構築し燃費解析を行っています。モデルを作成する際、同定という作業が生じますが、そこでは多くの実験・解析が必要であるため、人工ニューラルネットワークによる効率化が求められています。
ただし、人工ニューラルネットワークは、学習範囲外の入力では精度が低下してしまうため、そのままモデルにはできません。そこで物理モデルのモデルパラメータを,ANN(人工ニューラルネットワーク)を利用して同定する手法を開発することを目的として研究しています。
・天然ガスエンジンにおける数値解析
天然ガスエンジンでは総合的なエネルギー効率を高めるためにガスエンジンコージェネレーションシステムという,ガスエンジンで発電を行い排熱を回収し再利用するシステムを活用しています。しかし現状では回収した熱を使い切れず総合効率が下がってしまっています。そのため,総合的なエネルギー効率を高めつつ,発電の比率を高めることが望まれています。
解決策として発電比率を高めるためには熱効率を向上させる必要があり,超高過給化や希薄燃焼が方法として挙げられます。希薄予混合気の着火安定性を高めるための方法として副室式ガスエンジンが使われており,その熱効率改善のためのシミュレーションモデルの開発を進めています。
・実験
実験のアプローチでは本研究室にある様々な種類のエンジンを利用して排気特性の調査,燃費改善(点火方式の工夫など)について研究しています。こちらもテーマが多岐に渡るため一部分のテーマを紹介していきます。
・ガソリンエンジンの燃焼特性が振動に与える影響
自動車における問題としてエネルギー問題,また居住環境問題があります。これらの問題解決のため低環境負荷,振動騒音低減を目的として振動騒音の40%以上が原因とされているエンジンについて研究しています。
手順として,燃焼指標と振動指標の評価→高効率低振動運転点の提案→振動伝達経路寄与度の測定:筒内圧センサーと多数の振動センサーを取り付け,燃焼と振動の関係の解析を行っています。
・燃料改質ガスを利用した副室式ガソリン機関における希薄燃焼限界の拡大
ガソリンエンジンのさらなる熱効率向上を目指し,空気過剰率2.0を超える超希薄条件での運転が可能な燃焼技術の確立を目指しています。
そこで副室燃焼に注目して,副室内にガソリンを改質した水素含有ガスを供給することで副室内を希薄燃焼させ,主室の燃焼を促進するとともに, 窒素酸化物(NOx)の排出を低減させることを目的として研究を進めています。
研究内容は
・改質ガス(改質器によってガソリンから水素を含むガスに改質)を利用した副室式ガソリン機関を実現するための
各パラメータの検討
・1次元解析及び3次元解析による,副室内への改質ガスの噴射割合及びその噴射条件の検討
となっています。