当研究室では,機械構造物の弾性変形をともなう線形・非線形振動の構造動力学を技術的基盤として,有限要素解析や
実験的手法を使用して振動現象の予測手法の開発を行うとともに,振動現象の有効活用法などについての研究を行って
います.
(1) 実験モード解析
実験モード解析は,機械構造物の共振周波数,モード形状,減衰比などの振動特性を実験的に明らかにする手法です.
例えば,自動車の機械要素に対して実験モード解析を行うことで,共振を回避するための設計変更や,繰返し発生する荷重の特性を修正するための指針を得ることができます.これらの振動特性は,部材の機械的特性(弾性係数,形状,密度
など)と機械の状態によって決まる機械構造固有のものであると考えられています.
私たちは,これらの振動特性を実験的に高精度に求める技術の開発を行っています.
図1にはモータステータの詳細な実験モード解析結果の例を示しています.
図1 モータステータの実験モード解析結果
(2) 固有振動モードの逆解析によるき裂の同定
対象物の機械的性質や状態が分かっているときに,動的負荷に対する機械の動的応答を予測・解析することを順解析といいます.逆に,機械の動的応答から機械特性,状態,動的荷重を同定することを逆解析といいます.
機械構造物の振動特性は実験で比較的容易に求めることができるため,この特性から機械の特性や状態を逆解析することが比較的容易です.私達は中でも損傷同定に着目し,周波数応答関数に最適化計算技術を適用した逆解析による機械構造物の損傷同定手法の開発に取り組んでいます.
図2には切り欠きを有するアルミ平板に開発した同定手法を適用した例を示します.
図2 損傷同定の概要
(明治大 理工学部 A.S)