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研究テーマ

22A3-7-01 電動モータ振動伝達特性予測:ステータ_01

【研究室紹介】岐阜大学 工学部 古屋准教授グループ

 有限要素法による振動が関わる予測モデルの構築,モデルと実物の乖離要因の特定,機械学習を利用した非線形性を含む現象のモデル化,異常検知に取り組んでいます.

現在取り組んでいる研究テーマは主に以下の3つです.

 

(1) モータステータ,短繊維複合材料などのモデル化

 モータステータのモデル化は,現在TRAMIと一緒に取り組んでいる研究テーマです.
図1に示すように電磁鋼板を数百枚積層したモータステータを忠実にモデル化すると,モデル自由度が非常に大きくなり,取り扱いが大変になります.実際の振動現象を表現しつつ,モデル構築が容易で,自由度が小さい有限要素モデルの構築を目指しています.
 また,図2に示すようなガラス短繊維-熱可塑性樹脂複合材料(Glass fiber reinforced thermo plastic-GFRTP)のモデル化にも取り組んでいます.自動車の燃費向上を目的に,熱可塑性樹脂とガラス短繊維や炭素短繊維を複合した複合材料の利用が増えています.この複合材料は,射出成形機を使って成形しており,繊維の分布,向きが場所によって異なること,繊維までを忠実にモデル化するとモデル自由度が非常に大きくなること,熱可塑性樹脂の物性,特に減衰性能が周波数依存性を持つこと,などが振動特性の予測を難しくしています.その課題に対して均質化法,材料試験を行いながらモデル構築が容易で,自由度が小さい有限要素モデルの構築を目指しています.

 

    
        図1 モータステータ            図2 GFRTP板と内部のガラス繊維の配向

 

(2)過渡応答を利用した有限要素モデルの乖離要因の特定

 数値計算環境の発展により,機械構造物の動特性を試作前に予測可能となりつつあり,低周波を対象にした場合,有限要素法が広く利用されています.しかし,自動車のように部品が多数存在する場合,動特性の予測精度が低い場合があります.本研究では,自動車開発などで性能評価指標の一つとなっている周波数応答関数(Frequency Response Function,以下FRF)の予測精度向上を目的に,実物と有限要素解析で求めたFRFの乖離の原因(以下,乖離要因)を,過渡応答を利用して特定する方法を提案しています.
 提案している方法の概要を図3で説明します.図3に示すように構造物のある点を加振したとき,励起された振動は加振点から構造全体へ波動として伝播します.その間,部品の結合部など,不連続部で反射,透過を繰り返します.FRFは,一般には,加振から振動が収束する時刻までの時刻暦応答を周波数領域へ変換して求めます.よって,FRFには構造物全体の影響が含まれており,FRFを使って乖離要因を特定した場合,判断を誤る場合があります.
 一方,加振直後の加振点近傍の応答に着目すると,その応答には加振点近傍の特性だけが含まれます.
そのため,加振直後の加振点近傍の応答を実験と有限要素モデルで比較することで,加振した部品が乖離要因か否かを判断できます.提案法にも加振方法などに難しさがあり,現在,その改善に取り組んでいます.

                        図3 波動伝播の様子

 

(3)機械学習を利用した非線形性を含む現象のモデル化,異常検知

 工作機械に多数のセンサを取り付けられるようになり,多くのデータを自動で収集できるようになりました.そのデータを利用して工具の摩耗や加工中の異常の検知を,機械を止めずに加工中に自動で行いたいというニーズがあります.
私たちは主に振動や音圧データを入力とした統計モデル,機械学習モデルを利用して,工具の摩耗,加工中の異常を検知する研究を行っています.
図4には工作機械に取り付けた加速度センサを示し,図5にはニューラルネットを利用して予測したドリルの摩耗量の予測値と実測値の比較を示します.

 

        
          図4 加工とセンシングの様子            図5摩耗量の予測結果

 

 (岐阜大工学部 K.F)