第3回 産学連携講座を7月25日(火) 九州大学 伊都キャンパス 椎木講堂にて開催します。
TRAMIの活動は、組合員全体の共有の困りごとを技術研究で解決するだけでなく、
アカデミアの皆さんと一緒に人材育成しあいながら成長していこうという志を持っています。
そのような志の中で企画するのが、この産学連携講座。今回は、九州大学工学部の黒河先生にご協力いただき開催します。
昨年度第1回は同志社大学にて「知の深化(ふるきをしる)」、第2回は東京理科大学にて「知の探索(技術研究の未来)」をテーマに開催し、
現地参加・Web参加合わせて、第1回は350名、第2回は420名ほどの参加をいただきました。
温故・知新とつなげていく流れの中で、今回は「ふるきをたずねる」回となります。
扱うテーマは「ギヤ」。
ギヤと言えば、古くはエジプト文明の水汲み装置に端を発し、
紀元前204年製とも言われるギリシャ文明のロストテクノロジー計算機アンティキティラ島の機械や、
14世紀に発達した機械式時計、
オランダ海運の覇権を支えた西インド会社の風車スパイスミルなど…
活躍の歴史は枚挙にいとまがない、自動車の部品の中でもバネ・車輪に並ぶ長い歴史を誇る重要部品の一角です。(※諸説あり)
重要部品ではありながら…このギヤ、なかなかに地味です。
タイヤみたいに外からパッと見えないし、サスペンションのバネみたいに自分で弄る人もそうそういません。
エンジンやモータみたいに車の種類や呼び名を決める決定打にもならない。
業界勤務の産側メンバはともかく、学生さんでは見たこともない人も多いのではないでしょうか。
私も会社に入って、トランスミッション開発に従事し始めたばかりの頃は、上司から
「トランスミッションは縁の下の力持ち。
車両の走行を支えるが、目立ってはいけない、気づかれてはいけない、
お客様がエンジンとタイヤの間に何か変な動きをするものがあると感じたとしたら失敗だ、負けだ」
と常々言われて育ったものです。
でも実際は、ギヤは「変な動き」をしてナンボだったりもします。
色んな事ができるんですよ!
回転の早さを変えたり、力のかかり具合を変えたりのいわゆる「変速機」としての機能は有名ですが、
回転の向きを直角に曲げたり、回転運動を直進運動に変換したり、ある軸から別の軸に力を受け渡したり。
総合的に設計して、車両の挙動や走り方をコントロールすることもできます。
設計次第でいろんなことが自由自在に考えられる、非常に魅力的な機械要素です。
そして、いろんなことをやっているのに、運転者には存在がばれないように、気づかれないように、忍者のように気配を消すこともできるのです。
それが良くないんでしょうか。
目立つことも隠れることもできるんですが、けっきょくギヤって大体の場合、目立たないように設計するので
業界でも徹底的に地味なんです。
地味過ぎて、最近のTRAMIでのギヤのキャッチフレーズは「絶滅危惧種」。
ギヤを専門に挙げていただいている学の研究者の数が減ってきていたり
電気自動車で考えると、エンジンと比べてモータは運転時の制御の自由度が高いので、
ガソリン車のようにいろんな機構を駆使せずとも単純な減速機で十分と思われていたり、
変革の時代を迎えた自動車業界では、ギヤは少々苦しい立ち位置にいます。
では、ギヤの技術には未来がないでのしょうか。
いいえ。むしろ、洋々たる展望があると考えます。
電気自動車になったって、モータだけでは車は走れません。
クルマの走行性能にモータの特性を合わせるためのギヤ、カーブをスムーズに走行するためのディファレンシャルギヤ、またハンドルやパワーウィンドウ、シート等々、
車はギヤの技術が支えているのです。
空飛ぶクルマなど将来のモビリティにおいてもギヤの技術は欠かせないでしょう。
会場となる椎木講堂は九州大学の創立百年を記念して建てられ、躍進百大の基本理念を象徴しているんだそうです。
長いギヤの歴史と未来、素敵な建物に象徴される歴史と未来に思いをはせながら、ギヤの魅力にどっぷり取りつかれた学者とエンジニアのめくるめく世界をのぞいてみませんか?
さて、互いに噛み合ってチカラを変換し伝えてくれるギヤのように、
我々、産と学(のギヤ)は本当に噛み合うことができるのでしょうか。…
・・・今年の夏は、今まで以上に熱くなりそうです。
(産学連携タスクフォース H.Y.)