2022年6月3日。コロナ禍で足掛け3年に渡り計画していた産学連携イベントが、
新緑中に佇む、レンガ色の同志社大学京田辺キャンパスで開催されました。産学連携ポスター_220519-C
すばらしい会場・メンバーに恵まれ、ここまでの道のりを振り返ると万感の思いです。
昨今の環境変化からイベントの開催方法は大きく変化し、リアル+リモートでのハイブリッド方式で実施され、
国内ステークホルダーさらには、多くの学生の皆様、総勢およそ350名に参加していただきました。
このような世の中の変化にどのように対応していくか、新しいアイデアの創出や、今まで経験したことのない
やり方に適応していくことが、当然ながら我々技術者にも求められるんだとつくづく思い知らされます。
さて、限られた時間の中での準備およびリハーサルは、出演者のストレスを増加させ、緊張の中で、
ディレクターのカウントが進みます。「5・4・3・・・・・!」
司会進行は、プロの司会者の西川さん。そしてAVLジャパンの友松さん。
今回のイベントの全容を説明し終えると、二人の緊張も和らいだようで、いつものテンポのやり取りが戻ってきました。
ここからは、イベントのイントロ部分、チャプター1の”CVTを創った技術者たち”の動画。
この動画は、トータル3時間以上もある動画を座談会用に編集したものです。先輩たちの熱いメッセージが続きます。
・CVT用の金属ベルトを開発するにあたり活用した様々な学問
機械工学、トライボロジー、破壊力学など
・モノを生かすコントロール技術開発
制御工学、プログラミング
このあたりが、諸先輩方からの産学連携に関するメッセージでしょうか。
今回ご登壇いただいたのは、産から2名、学から3名の計5名。動画を見終わったのち、同志社大学の大窪教授からは、
CVTを量産するにあたり基礎となる基盤技術を実験的アプローチも使いながら研究していることを教えていただきました。
楽しそうに研究のお話をしてくださる大窪先生によって、前述の動画にさらなる彩が添えられたように感じます。
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さてここからは、産から学への特に学生の皆様へのプレゼント(チャプタ―2)。
学生の皆様にはぜひ、今学んでいる学問の活用事例を、産のお二人から聞いてほしいと思います。
一人目のホンダの金原(カネハラ)さんは、同志社大学にて博士号を取得されました。
”CVT金属ベルトといえば金原さん”というお方で、その筋(どの筋?)では非常に有名な方。
金属ベルトの数学&物理的なアプローチによる技術開発についてご講演いただきました。
二人目の日産の山藤(サンドウ)さんは、昨年電気通信大学で博士号を取得した日産の若手ホープ。
スマートな口調ですが、時折ちらりと見せる熱い思いとともにご講演いただきました。
CVTをコントロールする油圧制御系の振動抑制を、実験および数値解析的アプローチで研究されています。
実は各社の現役技術者たちが、”もうちょっと教えてよ”と思えるネタなのではないでしょうか?
ここまで前半戦。期待通りの盛り上がりを見せ小休憩に・・・。
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後半のチャプター3は、学から産へのプレゼントとなります。
ご登壇されるのは東京理科大学の佐々木先生。先生は理科大のトライボロジーセンター長を兼務されている
トライボロジーの権威。とても貴重な講演となりそうです。
私自身、トライボロジーという学問は、確かに学生時代に履修した記憶がありますが、
当時はそれほど大切にしていなかったような・・・(怒られそうですね)。
しかし、機械工学を職とする我々は、切っても切れない非常に重要な学問であることを
後々思い知らされることになります。
モノとモノの擦動部分の潤滑、そしてミクロな抗力、摩擦と上手に付き合うことが、
今後のカーボンニュートラル技術にとても重要であることをわかりやすく説明いただきました。
ここまでわかりやすいトライボロジーの講座ははじめてかもしれません。
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最後のチャプター、産学双方向コミュニケーションに移っていきます。
企画者側はとても心配していたチャプター。”盛り上がるだろうか?ネタが続くだろうか?”
そんな心配は・・・数分もしたら消え去りました。
「ひとつの学問にこだわらず、若い時は、数学、物理、制御、そして哲学的な見解などいろいろ学んでほしい。
人生いくつになっても学べますが、やはり体力があるうちがとても効率よく学べますよ。」
「クルマ~パワートレーン~エンジン・駆動~物理(力学)~数学(釣り合い式)・・・。
なにか成し遂げるためには、結局一つ下の階層の学問を学ぶんですよね。
何か一つだけにこだわらず一つ下、一つ下と領域を拡げてください。」
「何事も楽しんでやりましょうよ。楽しいことならば考える。たぶん考えることは楽しいと思う。
自分をいかに楽しませることができるか?楽しませることに出会うことができるか」
「何事も、意図・意思を持って歩くと、答えが見つかるものですよ。経験からそう思います。」
「雑用なんて仕事は一切ないと思います。もしかするとその雑用らしき仕事は、
将来、90歳の時に役立つかもしれない
私はそう思って歩んできました。そう思うか、思わないかで未来は変わりますよ」(TRAMI専務理事 藤井名誉教授)
人生の先輩方から、学生や若手技術者に向けてこんなメッセージが送られました。
一人の学生からこんな質問が・・・。
「ドクターに行こうか迷っている。どちらがいいか?」
私も学生時代に一瞬だけ迷った記憶があります。日本ではドクター行ってもメリットがないので就職しよう。
これが当時の結論でした。
すかさず、大窪先生よりこんなコメントが企業に向けて発せられました。
「企業の皆さん、こういう悩みをもっている学生がいます。ドクター行って専門的技術を獲得したら、
さっさと(好待遇で)採用してくださいよ!」
どっと会場に笑いが!(・・・産は苦笑いかも。)
最後の学生の質問とそのやり取りがとても心に残ったので最後に留めておきます。
「私は、クルマが好きです。好きなことを仕事にするべきか?
好きなことは趣味として仕事にしないほうがいいか悩んでいます。」
日産の山藤さん
「ぜひ、好きなことを仕事にしてください。それは幸せなことです・・・」
(運営委員 K.Y)