東京理科大学 理工学部 星研究室は、パワーエレクトロニクス(以下パワエレ)について研究をしています。
※パワーエレクトロニクス:電力用半導体スイッチング素子を利用して電力の変換や制御を行う応用技術分野の総称
パワエレは、電気自動車だけでなく、コンセント、家電、産業(機械、プラント)など多岐に渡る分野で
用いられています。みなさんご存知でしょうか?
星研究室では、非接触給電やモータ駆動をはじめとするパワエレの研究から、粉体燃料で動く燃料電池自動車等、
パワエレ×他分野といったの幅広い分野と融合した研究にも取り組んでいます!
ということで、研究範囲は、多岐にわたります。研究メンバーは先生含め34人です。
※星先生(教授)、太田先生(助教授)、PD(1名)、D(2名)、M(19名)、B(9名)、研究生(1名)
それでは、研究の中身について、ちょこっとだけご紹介します!
まず、星研究室は、以下の4つのチームで構成されています。
***********************************
(1)水素班
水素班は、水素自動車で東京―大阪間を安全に走行することを目標に活動しています。
(自分達がつくったもので冒険をするみたいで、ちょっと『夢』を感じませんか?)
特徴的なのは、気体水素ではなく粉末状の水素(NaBH4)を使った研究をしているところです。
NaBH4をリアクタ内で反応させ、水素を取り出すことによって燃料電池自動車(FCREEV)を
駆動することが可能です。新しい水素キャリアである粉体NaBH4は、体積エネルギー密度が高く、
常温常圧下で安定しています。その特性を生かし以下3つの大きなテーマに取り組んでいます。
・水素生成システムを搭載した燃料電池自動車
・可搬型水素エンジン発電機のシステム
・水素リアクタとその触媒および廃液排出機構
リアクタ実証試験装置 NaBH4粉末
(2)モータ班・・・TRAMIのCスキームテーマです。
1. IPMSMの高効率、低騒音、低振動制御
車載用として主流となっている埋込磁石型同期電動機(IPMSM)の更なる高効率化、
高性能(低騒音、低振動)化に、構造+制御両方の観点から取り組んでます。
高回転領域におけるインバータ制御の切り替えに伴い発生する過渡的な振動、騒音(トルクリプル)の抑制や
モータ温度、磁気飽和を考慮した振動、騒音の抑制制御に取り組んでます。
2.SRMの低騒音、低振動化の研究
1.のIPMSMは、モータ構成部品の永久磁石にレアアースを用いるためコストや材料の課題が発生します。
私たちは、ロータに永久磁石を用いないスイッチリラクタンスモータ(SRM)の研究にも取り組んでいます。
一方で、SRMは、IPMSMに比べトルクリプル、ラジアル力リプルによる振動が大きいというデメリットがあり、
そこを抑制する制御を検討し、実力把握をしています。
(3)回路班
現在、世間では電動モビリティの代表的な課題である『充電時間の長さ』を解決するために、
現在、可搬型バッテリを活用した交換式の充電スタイルが検討されてます。(中国のバッテリースタンドとかですね)
バッテリからモータに電力を使おうとすると、バッテリ電圧の昇圧回路を挟み、
更に直流を交流にする工夫が必要になります。特にLiイオンバッテリの電圧は充電の状態(0%なのか100%なのか)
により変化するため、昇圧をする際には、様々な電圧比において高効率なものが求められます。
様々な電圧比に対し、高効率な回路はもちろん、寒冷地でEVを暖気するための加熱回路とを
両立できないか検討を行ってます。
また、燃料電池に適用することを想定した直流-直流変換回路の研究も実施中です。
(4)ワイヤレス給電班
社会的な課題として、持続可能な社会に向けて電気自動車(EV)の普及が話題です。
しかし、EVには一充電時間当たりの航続距離が短い、充電時間が長い等の課題があります。
その課題解決の一つとして、われわれ給電班は、走行中のEVに対して道路から給電を行う
走行中ワイヤレス電力伝送の研究を行っています。
ワイヤレス電力伝送には高い制御技術と高出力化が求められています。
そこで、星研究室では、走行中ワイヤレス給電システムの回路として
Soft-switching Active Bridge(SAB)コンバータの提案をしています。
従来方式では共振回路で無効電流を意図的に生成してソフトスイッチングを行っていますが、
導通損課題が残っていました。そこで、提案するSABコンバータでは、LC回路が代わりに無効電流を生成することで、
大幅な導通損失の抑制に成功しました!
ワイヤレス給電班では、SABコンバータを用いて高効率かつ低ノイズなワイヤレス給電システムの実現を目標に、
日々研究をしています!
現在、星研究室では、モータ班がTRAMIと連携しています。
JARIに通い、オープンラボを活用したり、産の皆さんとホロレンズや機能ブロックを使って議論することで、
自分の研究がどのように社会に貢献できるか?課題は何か?を理解したり、想像する機会を得ました。
引き続き研究の深掘りをこのスキームの中で進めていければと思っています。
(東京理科大 K.K)